佐賀県農業協同組合さま
農産物業界で進むパレット輸送

物流2024年問題への対応が、農産物の輸送でも進んでいます。
佐賀県農業協同組合(JAさが)さまは、主要品目であるたまねぎとみかんのパレット輸送の導入をいち早く推進されています。パレット輸送を始めたきっかけや導入効果について、JAさがの中溝さまにお話を伺いました。
※2025年3月取材当時の情報をそのまま掲載しています
※掲載されている会社名、商品名は、各社の登録商標または商標です

JPRレンタルパレット導入のきっかけは?
JAさが・中溝さま一言で言えば2024年問題への対応です。トラックの集車が厳しさを増しているなかで、このままでは、運べなくなってしまうという危機感がありました。
JAさがでは、2022年にたまねぎの輸送に全面的にレンタルパレットを導入し、もう一つの主要産品であるみかんの輸送にも展開を図っています。さらに2024年にはパレット輸送を促進するために段ボールサイズの変更にも取り組みはじめました。
たまねぎへの全面的なレンタルパレットの導入が実現した背景として、一部の運送会社さんからの要望に応える形で、先行してレンタルパットを導入していたことがあります。これが2020年ごろなのですが、すでにトラックの確保に厳しさが感じられていましたね。その導入例を広げるかたちで展開したのが今回の取り組みです。
JPR導入効果は?
JAさが・中溝さまやはり一番の成果は、レンタルパレットを導入して作業効率を上げたことで、トラックの確保がしやすくなったことだと思います。
ドライバーさんの拘束時間に関して言えば、輸送先のエリアによっては従来から鉄道を使っているところもあります。ドライバーさんの労働時間を規制の枠を超えないようにしなければならないのは当然のことなのですけれども、それにも増して、トラックが確保できなくなってきている。そういう状況のなかで、安定的に集車ができるようになったことを効果として感じていますね。
さらに作業時間を大幅に短縮できました。
従来、パレットを使用しない「ベタ積み」では、積み込みに1車両あたり1時間半から2時間の時間を要していましたが、レンタルパレット導入後には15分ぐらいで済むようになりました。
出荷現場である選果場でかつては朝から夕方まで積み込みを行っていたものが、いまでは午前中にすべてのトラックが出発していきます。

JPR着側の卸売市場での変化はいかがですか?
JAさが・中溝さま市場では、パレット積みの車両を優先してもらえることが多いということで、ドライバーさんから好評の声が上がっていると聞いています。
卸売会社さまとは、パレット輸送を始める際に事前に案内をしていまして、開始にあたって大きな問題はなかったです。ただ、市場には多種多様なパレットがあるようで、入ってきたレンタルパレットの管理ですとか保管場所の確保が大変だという声もありました。
JPR卸売企業さまにご理解をいただきながら、レンタルパレットが農産物輸送のメインになるよう努めてまいります。やはり対話が大切だと感じています。
JAさが・中溝さまそうですね。コミュニケーションという意味では、生産者のみなさまとの理解共有が重要です。
今回の導入にあたっては地区ごとに生産者のみなさまへの説明や話し合いを重ねてきました。切り替えに伴う設備や運用の変更が伴いますし、費用も生じる取り組みですから、「このままでは、トラックが確保できず大切な産品が届けられなくなる」という認識を共有することが非常に大切です。
そのうえで導入に進んでいくのですが、出荷までの工程には選果場で選別・箱詰めをする「共選」と、農家さんで行う「個選」という大きく二つの流れがありまして、共選品からレンタルパレットの導入を進めました。まず共選品でパレットの運用や管理を理解いただく段階を設けて、それから個選品のほうに広げる順番で導入した結果、パレットの紛失も起きず運用できています。
JPR段ボールサイズの変更にも取り組まれているとのことですが、詳しく教えてください。
JAさが・中溝さま2022年にレンタルパレット輸送を始めたのですが、段ボールのサイズが11型に合っておらず、わずかにオーバーハングしていました。そのために車種によっては積載できない問題がありましたので、段ボールサイズの変更に踏み切りました。こちらも、たまねぎからみかんへと横展開で切り替えを進めています。

JAさが・中溝さま段ボールのサイズの選定は、他県の産地の事例も参考にしながら進めましたので、それほど時間はかかりませんでした。
ただ、みかんでは、10㎏入りと5㎏入りから、8㎏入りと4㎏入りへと段ボールの寸法だけでなく入り数も変わることになります。このため選果場の設備更新のタイミングと合わせて順次切り替えをする計画にしています。販売の単位が変わり、経過期間には4種の段ボールが混在することになるので、卸さんには変更の目的をお伝えしてご理解をいただくようにしました。
サイズの変更に伴って、段ボールの高さが変わった(高くなった)ので、ロボットの調整や荷崩れがおきないか、積載方法の確認なども行っています。
JPRこれからパレット輸送を始める産地や企業にとっても、参考になるお取り組みだと思いました。この他にポイントとなることも伺いたいです。
JAさが・中溝さま現実的なこととして、パレット輸送の導入はコストも伴う大きな問題です。導入にあたっては、まず、「このままでは運べなくなる」という運送のリアルな状況について生産者をはじめとした関係者の方々にお伝えすることが大切です。
認識を共有することは大変なことですが、まずはそれが第一歩ですよね。そのうえで、どうやったらコストが抑制できるか、うまく導入できるかといったことを工夫していくことだと思います。
JPR貴重なお話をありがとうございました。