味の素冷凍食品株式会社さま/F-LINE株式会社さま

冷凍食品業界でいち早くレンタルパレットによる輸送を促進

左から
F-LINE株式会社 低温・流通本部 低温・流通第一営業部 次長 岩田護さま
味の素冷凍食品株式会社 ロジスティクス部 物流企画グループ マネージャー 山下尚子さま
味の素冷凍食品株式会社 コーポレート本部 ロジスティクス部 次長 上園健さま

ライフスタイルの変化に伴って、手軽でおいしい冷凍食品は、私たちにとってより身近になり市場も年々拡大しています。味の素冷凍食品株式会社さまは、F-LINE株式会社さまとの連携のもと、2022年に九州工場から全国の自社拠点に向けてパレットによる輸送を開始。2025年には中部工場を起点とする輸送にも拡大する計画です。冷凍食品業界でいち早く、レンタルパレットによる輸送に取り組んだ背景や成功の秘訣について伺いました。

※2025年3月取材当時の情報をそのまま掲載しています
※掲載されている会社名、商品名は、各社の登録商標または商標です

JPRまず、冷凍食品業界における物流の特長について教えていただけますでしょうか。

味の素冷凍食品・上園さま冷凍食品はマイナス18℃のコールドチェーンで厳格な温度管理、品質管理が求められます。冷凍食品業界も他の業界と同様に環境負荷低減への対応や遵法、そして物流現場で働く方々の働く環境の改善が求められているところですが、物流に関してはまだまだ取り組まなければならないことが多いです。
冷凍食品の物流は従来からバラ積み、バラ降ろしが主流で、それを解消するのがパレットになるわけですが、パレット化が難しい事情があります。例えば冷凍倉庫などの設備が12型パレットのサイズで設計されていることが多いことです。11型で輸送を行おうとすれば、違うサイズのパレットの間での積み替えが生じてしまいます。また、パレット輸送ができたとしても積載率が下がります。これは3割以上も下がるケースがありますので同じ量を運ぼうとすればトラックを増やさなければならない。こうした課題があります。

味の素冷凍食品・上園さま

F―LINE・岩田さまやはり圧倒的にバラ積みが多いことが冷凍食品の物流の特徴だと思います。
手荷役の場合、トラック1台あたり2時間ほど積み込みに時間がかかります。温度管理の面では、荷役はなるべく早くしなければなりません。2024年問題に関わらず対応しなければならない課題ともいえます。
また、常温製品もそうですが、SKU(Stock Keeping Unit。在庫管理で商品を識別する最小単位のこと。)が多い。輸送コストのことを考えるとトラックの荷台にはなるべく多く積みたいですから、荷重による段ボールへのダメージにも気を付けながら多種の商品をまるでパズルのように積み込む場面もあります。降ろす際にもSKUを取り違えないよう注意しなければなりません。このように人の目や人の手に頼るところが多く、荷役作業が長時間になる理由の一つにもなっていました。
しかし、ここにきてバラ積み荷役を敬遠するドライバー、運送会社が顕著に増えています。ここ数年というよりは2024年4月以降の1年で状況が激変した印象です。運送会社自身も法令の労働時間を守らなければならないですから、長時間の手荷役作業のない仕事の方が優先されていることは明らかですね。

F―LINE・岩田さま
バラ積みの荷役時間の長さは、集車の困難さにもつながっている

JPRそこでパレット輸送の導入を検討されることになったのですね?

味の素冷凍食品・上園さまこうした変化を見越して集車の安定性の確保ですとか、物流ネットワークの維持という観点で、パレット化は不可欠だろうということが検討をはじめた理由です。他の温度帯も含めた味の素グループ全体で見ると、冷凍食品のパレット化は遅れていることが明らかでしたので、そういった切迫感もありました。そこに新物流効率化法での、荷役・荷待ち時間時間の短縮といったことが重なってきたという状況です。まず九州工場発の一次輸送を対象に2022年からパレット化しました。

JPR導入効果はいかがでしたか?

味の素冷凍食品・上園さま集車の安定化については明らかな効果がありましたね。九州工場でパレット輸送を開始した2022年当時でもその効果は歴然でした。さらにトラック確保が厳しさを増している現在であれば、本当に運行自体が組めないのではないかと思います。
手荷役からパレット荷役に変えたことで物流品質も向上していますね。車両積載数量が減少となった分、車両台数は増加しますが、反面工場側の出荷作業の効率が向上しました。バラ積みの際にトラック1台あたりの積み込みに2時間から2時間半を要していたものが、1時間以内になりました。
バースの回転が向上して1日あたりの出荷量が増えたことによって、従来は土曜日も出荷をしなければならなかったのですが、今は金曜日までに完了するようになっています。2024年には九州工場から関東のお取引先さまにパレットで工場直送するということも実現しています。

パレット輸送により集車が安定化する効果が得られた
導入前後のフロー

JPR導入にあたっての課題は?

味の素冷凍食品・上園さま実は九州工場もそうでしたが、弊社では11型でも12型でもない、15型という特別なサイズのパレットを使っていまして、保管には有効だったのですが輸送には向かない。それで、まず、パレットサイズを11型に統一しようと。F-LINEさんにご協力いただきながら検討をしまして、一貫パレチゼーションへの展開を考慮するとレンタルパレットの導入が有効であろうという判断に至りました。
そして、F-LINEさんにレンタルパレットの導入を決定いただきながら、私どもとしては必要な設備投資、例えば、工場倉庫であるとか、クレーンの大規模な改造を行っていくことになりました。工事期間中の代替倉庫の確保などの経費も含めて、非常に大きな投資ですから、2018年頃から入念に検討や準備を重ねてきました。並行して行ったもう一つの取組みが11型への外装サイズのモジュール化ですね。

味の素冷凍食品・山下さまはい。先ほど触れられていましたが、一般にパレット輸送を始めることによって積載率が下がってしまいます。そこで11型パレットでの積載率を最大限に高めるために、外装、荷姿、入り数を変更して11型パレットにモジュール化する取り組みを行いました。
当社は、モーダルシフトの拡大にも取り組んでいるのですが、鉄道輸送等への切り替えを行う際にも、もうパレットでないとできないという状況がありまして。モーダルシフトの拡大とパレット輸送化はほとんどイコール、セットのような関係になっています。ただ、モジュール化によって外装や入り数を変えることは、物流会社さんとの間の料金体系にも影響があり、簡単ではありません。

味の素冷凍食品・山下さま

F―LINE・岩田さま外装と物流の料金に関して申しますと、冷凍食品の物流ではトンキロベースではなく「個建」という概念が強く、複数の箱をバンド結束し「荷合わせ」して、1ケースとして扱うような運用も行われています。外装サイズの変更によって「単箱化」することは料金に影響が及ぶという訳です。

味の素冷凍食品・山下さまそうですね。そこで、F-LINEさまにもご協力いただきながら、時間をかけて対応しました。それから、外装や入り数の変更は販売条件の変更にもなりますから、営業部門との調整も不可欠です。
また、新商品のように管理用のコードも登録するといった内部的な準備も必要になります。こうした変更を全ての商品で同時に行うことは現実的には難しいことですので、優先順位をつけて取り組んでいまして、商品改訂の計画などとも同期を取りながら、今も継続しています。

JPR大きな投資、様々な調整が必要なプロジェクトであることが分かりました。このような取り組みを御社がいち早く推進できた理由は何でしょうか?

味の素冷凍食品・上園さままず、F-LINEさんとの協力関係ですね。2024年問題に対する危機意識を共有しながら、連携して具体的な対策や計画を検討できたことがベースにあります。
また、環境問題や働き方など、社会的な課題に対する取り組みに積極的に取り組む味の素グループの企業風土も取り組みを後押ししたように思います。そして、社内の連携ができたことですね。経営、それから生産部門、営業部門などの理解や協力が欠かせません。

味の素冷凍食品・山下さままず、各部門の方に会って誠実にパレット化の必要性から伝えるようにしてきました。
目的や意義について理解をひとつにした先には、部署の壁を越えて取り組めることは当社らしさであり、取り組みが実現した背景でもあるかなと思います。
また、私自身がこの仕事をする前に複数の部門を経験してきたということも大きかったように思います。私たちの依頼が各部門にとってどのような影響があるのかを想像できる。パレット化の必要性を丁寧に伝えたうえで、社内の協力を得ていきました。

味の素冷凍食品・上園さま物流に関する危機感を共有して意識を変容してもらうこと。それが各部署にパレット化に向けた行動をとってもらうために大切ですね。
私もマーケティングや経営企画の仕事を経験してきましたが、ジョブローテーションは、会社全体を見渡したプランニングや調整ができる素地になっているとも思います。

JPRこれからの展望、JPRに対する期待やご要望をお聞かせください。

味の素冷凍食品・上園さまパレット化は大きな経営判断を伴う、非常に大きなプロジェクトです。設備投資や外装モジュール化などを、様々な関係者やタイムスケジュールとの調整を図りながら、着実に進めていきたいと思います。パレットサイズの変更には、生産ラインや倉庫設備の改修など長い時間がかかります。まず一次輸送から。そして二次輸送にもパレット輸送を広げていきたいですね。お届け先への輸送はまだ一部での実施となっていますが、JPRの回収ネットワークには期待をしています。

JPR貴重なお話をありがとうございました。

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