大塚倉庫株式会社 さま
パレット伝票の電子化からはじまる物流の未来
「紙伝票の管理や処理にかかる時間がムダだからどうにかして欲しい」
大塚倉庫株式会社からのこの一言をきっかけに、サービスリリースに至った「パレット伝票電子化サービス」。
同サービスのファーストユーザーであり、始点になった同社の代表取締役社長 濵長一彦氏に、JPRとのかかわり、同サービス導入後の変化、今後の展望について伺った。
※2018年10月掲載当時の情報をそのまま掲載しています
※記載されている会社名、商品名は、各社の登録商標または商標です
パレットの見直しが多用な取引のキッカケに
大塚倉庫株式会社は、1961年創業の倉庫・運輸関連業を担う企業だ。全国に物流拠点を持ち、医薬品・食品飲料・日用品の分野では国内最大級の物流量を誇っている。同社が属する大塚グループは、医薬品の製造・販売と、日々の健康の維持・増進のためのニュートラシューティカル関連事業をメイン事業とする。そのため、もともとは、医薬品を安定供給することを目的に大塚倉庫株式会社はつくられた。ところが、現在同社の売上高約500億円のうち実に6割はグループ外からの案件による。「大塚グループの商品を運んでいるだけでは、グループ内のコストセンターでしかない。培った物流ノウハウを提供し、社外からもきちんと評価される企業になりたいと考えました」と外販(グループ外からの案件)比率を伸ばした理由について、濱長社長は語る。
外販獲得に向けて積極的な営業活動を行うにあたり思わぬところで奏功したのが、パレットの見直しだ。「1999年頃からでしょうか、自社パレットからJPRのレンタルパレットへ切り替えを進めました。清涼飲料含む加工食品業界でスタンダードとなりつつあった標準サイズのJPRパレットを導入したことで、『同じJPRパレットで、同じところに納品するなら......』と営業の足掛かりになったのです」と濱長社長。
2018年7月末現在、JPR11型レンタルパレット共同利用・回収推進会(P研)※は加入しているメーカー企業324社、2017年度の年間運用パレット枚数は約3,300万枚と、まさに加工食品業界のインフラと呼べる規模に成長している。
属人化を防ぐこと、現場の手間を削減すること
しかし、外販が増えていく中で課題も出てきた。取引先拡大にともなって、扱う紙伝票の種類も飛躍的に増えていったのだ。加えて、取引先が増えれば増えるほど、JPRのパレットを扱う枚数も増え、管理するパレット伝票も増加していった。
濵長社長はこう課題を振り返る。「物流の世界から一歩外に出ると、クレジットカード1枚で何でも買い物ができる時代です。紙幣もいらなくなっているのに、物流業界は50歳の私が入社した当時から何も変わらず、ずっと紙ベースの処理を続けている。これでいいのだろうか、と思いました」
しかも、紙の伝票処理は、組織運営上の問題も生んでいた。「属人化を招くという課題もありました。煩雑すぎて、『担当者にしかわからない』という状況が起きていたのです。JPRの加納社長に、伝票処理について『ペーパーレスにしたい』と相談し、解決の方法を考えていただきました」と、濵長社長は続けた。
紙の伝票をなくせば、ドライバーの負荷を抑えることができる。物流の最終ランナーは、ドライバーだ。ドライバーが荷物の受け渡しの度に、サインをし、伝票を束ねていくのはかなりの手間。だからこそ、濵長社長はドライバーの負荷を削減できる仕組みをJPRとともに考えていくことを決意したのだ。
JPRによるパレット伝票電子化サービスで、モノ(パレット)の受け渡しをリアルタイムに現場で把握できるようになった。現場の作業負荷削減だけでなく、内勤者(管理システム「epal」への入力や伝票の管理保管、未照合になってしまったデータの確認など)の作業負荷の軽減も大きな成果だ。「現在は、モノが動いた時にスマートフォンでリアルタイムにデータ照合が可能になりましたから、細々した手間がなくなり、協力会社からの評判がすごく高いです」と、濵長社長はパレット伝票電子化サービス導入の手応えを感じている。
これまでも大塚倉庫株式会社では、IT技術を積極的に取り入れることにより業務改革を進めてきた。同社の目指す、人や物がつながる「コネクティッド物流」の実現に、伝票電子化サービスは欠かせない1ピースになりつつある。
「JPRさんは標準化・共有化をキーワードに事業を展開され、良い意味でどこにも染まらずパブリックな立ち位置でいる珍しい存在だと思っています。そんなJPRさんだからこそ、紙依存になっている業界を変え、モノの動きとデータがリアルタイムで一致し余計な業務負荷がない仕組みを作ってくれると期待しています」と濱長社長は語ってくれた。
※JPR11型レンタルパレット共同利用・回収推進会(P研):JPR11型レンタルパレットと共同回収システムによる加工食品業界の一貫パレチゼーションを推進している任意団体。1990年に発足。2019年4月任意団体としての「P研組織」からJPRの事業としての「P研システム」へ。
「伝票電子化サービス」とは
伝票電子化サービスとは、従来、紙で運用されていた複写式のパレット伝票を電子化し、パレットの移動情報をQRコードからスマートフォンで照会する仕組みのこと。紙管理などの保管業務や作業ミス、照合にかかる手間軽減をはかることが出来ます。2018年4月にサービスリリース。