株式会社ビッグ・エー さま
ドライバーの負担を軽減するために物流現場で高まるパレットへの期待
株式会社ビッグ・エーは、独自のローコストオペレーションを駆使して東京、埼玉、千葉を中心に200店舗以上をチェーン展開。常に価格を安くする企業努力を続けつつも、品質面で安全・安心な商品を厳選して取り扱っている。現在、5カ所の物流拠点を持ち、JPRのレンタルパレットの共同回収店としても、高い回収率を維持している。物流システム本部本部長の小室健宏氏に、同社の店舗の特徴や物流現場の様子などを伺った。
※2017年9月掲載当時の情報をそのまま掲載しています
※記載されている会社名、商品名は、各社の登録商標または商標です
日本で唯一のハードディスカウントチェーンストアの確立を目指す
株式会社ビッグ・エーは、生鮮食品・加工食品を中心としたハードディスカウントチェーンストアの運営を手がけている。1979年8月に設立され、同年11月に、埼玉県大宮市(現さいたま市)宮原に1号店をオープン。設立当時、本社と物流センターは埼玉県越谷市に置かれ、以降、北関東を中心に店舗を増やしていった。2003年に本社を現在の東京都板橋区に移転し、2006年には板橋物流センターが開設した。「ハードディスカウントチェーンストア(HDS)」とは、一般的には「ドイツのハードディスカウントストア企業であるアルディが開設した、小型の店舗で高回転の加工食品を中心に品目を絞り込み、徹底したコスト削減により超安値で販売する小売形態」とされる。同社は、「日本初で唯一のHDSのチェーンストア確立」を合言葉に、日夜業務を続けている。
株式会社ビッグ・エー物流システム本部本部長の小室健宏氏は、同社の店舗について以下のように解説する。「現在、関東に215店舗を展開しています。100坪前後の店舗がメインで、最近は45坪ほどの店もあります」
ワンストップショッピングで生活必需品が買えるというニーズにかなう店づくりをするため、小さめの店内を有効活用し、それぞれの地域のニーズにあわせた商品群に絞って取り扱っている。
たとえば、調味料などもいろいろな容量のものをすべて販売するのではなく、ある程度選別しているという。「広い店舗だと端から端まで歩いて買い物するのも大変ですよね。『ショートタイムショッピング』をキーワードに、商品を見つけやすく、入店からレジ精算までの流れがスムーズになるように、買いやすい動線を考えて売り場を設計しています。特に高齢者のお客さまに喜ばれています。当社はスーパーでもコンビニでもない独自の店舗形態を展開しているんですよ」
ショッピングカートからショッピングカートへのレジ精算方式も日本初となる同社の特徴だ。精算された商品はショッピングカートで受け取り、そのまま車や自転車まで運べるので、お客さまにとっても、買い物時間の短縮になると好評だ。
低価格を実現すると同時にオリジナルの開発商品にも注力
取り扱っている商品の価格の安さも、株式会社ビッグ・エーの特徴といえる。同社は「安さの秘密7カ条」として、「買い物袋を有料化」「生活必需品に絞る」「ケース陳列で手間をかけない」「支払いは現金のみ」「簡単な内装設備」「原則メーカー直送」「広告宣伝を控える」をあげている。
これらに加えて、物流センターで大量仕入れをすることなどで、低価格を実現しているという。「他社のスーパーでも売っている商品は、当社の店舗では2割ほど安くすることを目標にしています。最近、地域最安値の商品数500品目を達成しました。お客さまに安いものを安心して買っていただけるように、地域最安値の商品は売り場のポップの色を変えて、ひと目でわかるようにしています」と小室氏は話す。
同社ではストアブランドである開発商品にも力を入れている。そのアイテム数は、現在、200ほどにのぼる。ストアブランドの食品は、国産の材料にこだわり、できるだけ添加物を使わないようにしているのが特徴だ。
また日用品も、植物由来原料を使用したもの、ゴミの量を減らす詰め替え用商品など、環境に配慮したアイテムを多く開発している。
お客さまの声に応えるためチャレンジし続ける
株式会社ビッグ・エーでは面積が小さい店舗が多いだけに、従業員が各時間帯で2人しかいない店舗もあるという。この人数では、忙しい時間帯には、負担が大きくなることもある。
そこで、カッターも使わず誰でも簡単に開封でき、そのまま陳列ができるオリジナルの段ボール「SRP(シェルフレディパッケージ)」を採用。これにより、陳列にかける時間が大幅に短縮されたという。これも店舗のローコストオペレーションを実現するためのさまざまな工夫の一つだ。
また、店舗によっては、実験的な試みを行っている場合もあると小室氏は語る。「最近は、『デリベイク』という焼きたてパンを扱うコーナーを設置した店舗があります。パンは常時大体12種類程度あって、1日で1,000個売れることもあります。また、半数以上の店舗では焼き芋も導入しました。各店舗のお客さま層にあわせながら、いろいろな商品にチャレンジしています」
現場の作業の効率性を高めるパレットへの期待は大きい
200以上ある店舗への商品配送を担うのが物流センターだ。現在は板橋のほか、春日部、所沢、戸田、八千代にセンターがある。
物流部門で働く同社の社員は5人。そのほか、各センターの現場の仕事は、3PL(サードパーティロジスティクス)の物流会社に業務委託しており、現場の作業は3PL企業のスタッフを中心に行っている。
多くの商品が入出荷する物流現場では、常に効率性の向上を要求される。同社でも少しでも早く、多くの商品を移動・陳列するために、さまざまな工夫をしている。「店舗の狭いバックルームでも動かしやすい6輪台車を活用しています。当社では『品群別積みつけ』と言っていますが、たとえば菓子だけ乗せた台車、飲料だけ載せた台車に分けて、同種の商品をまとめて店舗へ出荷しています」と小室氏は説明する。
現在、同社物流センターへの商品の6割ほどがパレットで入荷されるという。「仕入れも在庫管理もパレット単位で計画するのが管理しやすい。特に連休前などの繁忙期は物流量が増えますので、いかに正確に計画するかがポイントになります。それに、ドライバーにとってもパレットだと納品作業が大幅に短縮できて、効率的です。手降ろしだと1時間以上かかる納品作業が、パレットだと約15分で終わりますから。当然、ドライバーもパレットの方が嬉しいのです。残念ながら、軽量な商品はパレット納品の比率があまり高くないのですが、今後、パレット納品率が高まれば、物流全体がさらに効率化されていいですね」と小室氏はパレットへの思いを語る。
ここ数年、ドライバーの人手不足が続き、荷待ち時間も含めた長時間労働が問題になっている。
国土交通省など関係各省庁からも、ドライバーの長時間労働を規制しようとする動きが出てきた。同社に限らず、入荷や配送時間の短縮化を実現するパレットへの期待は大きい。
物流全般の改善についてJPRとともに考えていきたい
同社は、創業2年目の1980年からJPRと取引を始めている。1995年には、JPR11型レンタルパレット共同利用・回収推進会(P研)※の共同回収店に登録した。その経緯や効用を小室氏は以下のように述べる。「当時からJPRのレンタルパレットでの納品が一番多かったので、一元管理した方が管理しやすいと考え、参加を決めました。決まった時間に空きパレットを返却できるので、パレットの整理を計画的に仕事に組み込むことができ、業務改善に役立っています」
JPRのレンタルパレットの管理は業務委託先企業が行っているが、空きパレットの返却が計画的に行われることで管理がさらに徹底されるようになったという。同社のJPRパレットの回収率は99%以上と高率を誇っている。
物流の効率化に向けた改善はまだまだやれることがあると言う小室氏。
最後に、「これまでも、JPRさんとはパレットのことに限らず、物流全般の改善について一緒に考えていただいていましたが、これからもお願いしたい。物流の分野でも、どんどん新しい技術が活用されています。そういった新しいシステムの情報なども積極的に教えてほしいですね。さらなる物流センターの効率化のヒントになりますから」とJPRへの要望を語ってくれた。
※JPR11型レンタルパレット共同利用・回収推進会(P研):JPR11型レンタルパレットと共同回収システムによる加工食品業界の一貫パレチゼーションを推進している任意団体。1990年に発足。2019年4月任意団体としての「P研組織」からJPRの事業としての「P研システム」へ。