三菱食品株式会社 さま
パレット循環システムの拡大とITや新しいテクノロジーに期待
三菱食品株式会社は、従来の中間流通業の枠を超えて、食と暮らしのバリューチェーンの“中核”を担う企業として、総合的な商品の取り扱いを全国で展開している。また全国の物流拠点でレンタルパレットの共同回収の一翼を担うJPRのパートナー企業でもある同社にロジスティクスの特長や、荷物を受け入れる側としてのレンタルパレットのメリットなどを伺った。
※2016年3月掲載当時の情報をそのまま掲載しています
※記載されている会社名、商品名は、各社の登録商標または商標です
バリューチェーン・コーディネーターを標榜、流通の最適解を提供する
三菱食品株式会社は、2011年に発足し、株式会社菱食・明治屋商事株式会社・株式会社サンエス・株式会社フードサービスネットワークの4社が経営統合した。国内外の加工食品、低温食品、酒類、菓子の卸売、それに関連する物流事業、サービス事業を主な事業としている。
2012年から4カ年にわたる「中期経営計画2015」では、「食流通の確かさと効率性を両立させ、食文化の豊かさと多様なライフスタイルを支える」との基本方針を掲げ、食をめぐる環境変化に対応した最適な流通を構築し、かつ食の豊かさ・楽しさを伝える「バリューチェーン・コーディネーター」を目指してきた。
同社は食品卸業としてトップシェアを誇り、多彩なネットワークとチャネルを獲得してなお、さらなる改革を続けている。
フル温度帯対応、在庫備蓄拠点のニーズに応えるロジスティクス部門
同社ロジスティクス部門では、全国約300拠点の物流センターで、物流と情報が一体となったソリューションを提供している。「中期経営計画2015」では、4社統合後の物流センターの効率的な再配置計画を進め、一方で成長していく業態や新しいニーズに対応した機能を付加した物流センターを新設。運営管理では、時代にあわせた環境対応を実施し、新たな物流システムの開発と導入を行い、より効率的かつ稼働率の高い物流センター網を作り上げるというミッションに取り組んだ。
三菱食品株式会社ロジスティクス本部長の千田建氏は、同社の物流センターの特徴を次のように説明する。
「スーパーやコンビニエンスストアのお客さまからのニーズにお応えした形の一つがフル温度帯対応の物流センターです。冷凍食品、チルド食品、生鮮食品、加工食品など、それぞれに最適な温度帯で管理すべき商品を一つの物流センターで対応しています。また、お客さまの在庫備蓄拠点という役割を持たせ、店舗のバックヤードとして機能する形態の物流センターも増えています。当社は、これらのニーズに対応するために、総合物流センター構想を推進しているところです」
フルラインナップ対応、ネットワーク力が強み
加工食品、酒類、菓子、そして低温食品、冷凍食品、生鮮食品、総菜系の原料。これら食品のフルラインナップに対応できるのが、同社の強みの一つ。全国に物流拠点を有する、ネットワーク力の優位性もある。ロジスティクス部門として強化している点については、「物流センターを新設する中で、とくに加工工場や総菜工場を併設するためのエンジニアリング力を身につけようと、ノウハウの蓄積に注力しています」と言う。もう一つ、省人化に対する取り組みもあげる。
「労働力不足ですので、省人化をはかるための研究部隊を本部内に置いて、取り組みを早めています。たとえば、積み着けについてはロボット化を、台車やパレット運搬では無人搬送機の導入を研究しています」
さらに、運送事業者、庫内作業会社など、パートナー会社との連携強化も進めている。事業領域を拡大する中では、メーカーからの物流業務の取り込み、店舗内の物流合理化に対する取り組みを強めている。
グループ内のレンタルパレット会社を清算しJPRのレンタルパレットへ一本化
同社は以前、グループ会社にレンタルパレット会社を持ち、グループ会社のパレットとJPRのパレットを併用。しかし、グループ内のレンタルパレット会社を2014年に清算した。
「当社のグループ会社は、標準パレット推進という思想はJPRさんと同じで、11型パレットを使用していました。私が本部長に就任したタイミングで会社を清算し、JPRさんのパレット一本でやっていくことを決断しました。併用は運用が煩雑になり非効率なので集約すべきだと判断したのと、当社が流通の全体最適化を阻害するような立場になってはならないと考えたからです。
自社パレットだと繁忙期に追加購入の必要があり、パレット備蓄のための保管エリアも必要です。さらに、メンテナンスや廃棄の問題もあります。レンタルパレットなら、繁忙期も枚数が自由に変動でき、備蓄エリアも不要、メンテナンスや破棄をする必要もありません。十分な経済合理性があります。レンタルパレットによる効率化をさらに進めるために、当社が使うレンタルパレットを統一したのです」
JPRのパートナー企業としてパレットの共同回収業務を担う
同社は統合会社の旧株式会社菱食の時代から20年以上、JPRのパートナー企業としてレンタルパレット共同回収拠点の役割を担っている。同社の物流センターのうち、パレット納品が多い物流センターを中心に約110カ所が、JPRレンタルパレットの「共同回収店」になっている。
季節により変動はあるが、平均すると一拠点あたり約300社が納品に訪れ、全国では数千社にも及ぶ。パレット納品が多い加工食品では約7割で、すでにJPRレンタルパレットが使われているという。同社が受け入れているJPRのパレットは年間約300万枚。JPRのパレットを利用する企業が増えていることで、必然的に年々受入枚数も増加している。千田氏には、「納入企業様にはJPRさんのレンタルパレットをもっと活用してほしい」という希望があるそうだ。
「納入される商品がJPRレンタルパレットに統一されれば、当社側では空いたパレットを仕分けしなくて済みます。JPRの共同回収はタイムリーにやっていただいているので、当社の物流センターで空になったレンタルパレットが停滞するということもありません。納入企業様側からすると、空パレットの回収に手間をかける必要がなくなりますから効率的ですね」と千田氏は言う。
パレット積載やパレット統一には大きなメリットがある
荷物を受け入れる側として、パレット積載のメリット、パレットを統一するメリットを千田氏は次のように説明する。
「バラ積みの場合は荷卸しをドライバーさんが行いますが、だいたい2時間ぐらいかかります。当社の検品担当者も立ち会いのため長時間拘束されるので、お互いメリットがありません。それに比べると、パレット積みならフォークリフトで荷受けができるため、作業時間が短縮できます。荷卸し時間でいうと、3分の1から4分の1程度でしょうか。荷受けのスピードアップや納品トラックの滞留時間の短縮に効果大です」
トラック滞留時間は、ドライバーの労働環境、周辺の交通渋滞、二酸化炭素の排出など、いろいろな意味で社会問題になっている。滞留時間短縮を真剣に協議する気運が高まっている。
バラ積みで積載量を増やすことを優先したいとの要望もあるが、パレット積みであれば1拠点あたりの納品時間・待機時間を短縮できるので、1日に複数の拠点への納品の可能性もでてくる。それでも納品受け入れ時間があわず複数拠点への納品が難しいとの声があがることもあるが、同社では、パレット活用推進のために、入荷時間の拡大も視野に入れて協議を持ちかけるなど、柔軟な受け入れ姿勢を見せている。
パレットサイズの統一にかんしては、加工食品業界では標準サイズの11型、酒類業界では9型が主に普及している。それに比べて、冷蔵・冷凍食品などの低温食品の分野ではパレットサイズが統一しきれていないという課題もある。
「当社は長らく標準サイズのパレットで対応してきたので、初期の段階でスペース効率は上がっています。低温食品の分野でも統一が進むと、スペースの問題や荷卸しの問題がさらに解消されるので、引き続き取り組むべき課題だと思います」
ハイパフォーマンスなロジスティクスを実現し省人化・無人化に取り組む
ロジスティクス部門の今後の展望を、千田氏は次のように語ってくれた。
「人件費や調達単価の高騰というのは逃れようのないことです。そこで事業領域を拡大した中で、共同物流や相互乗り入れを推進し、ハイパフォーマンスなロジスティクスを実現したいと考えています。そのためにも、こうした施策を実現できる人材を育成し、パートナー会社との連携も強化しなければなりません。安定物流を実現したあかつきには、本格的に省人化・無人化に取り組んでいきます」
最後にJPRへの要望を伺った。
「省人化・無人化をはかる上では、レンタルパレットの循環システムを拡大することと、ITや新しいテクノロジーへの期待が大きいです。RFタグを使った検品や検収のスピードアップや省力化、在庫ポジションのトレースなど、今後、一歩進めたさまざまな取り組みをJPRさんに相談したいと思っておりますので、前向きな提案をどんどんお願いしたいですね」