東京⻘果株式会社 さま

農産物業界でのパレット化への取り組み

東京⻘果株式会社
経営戦略室 課⻑ 中村 岩生 さま

⻘果物卸売業界1位の取り扱い高を誇る東京⻘果さま。東京都中央卸売市場大田市場において、産地と消費地をつなぐ橋渡し役として、全国から集まる安全・安心な野菜・果物の流通を担っています。今回は、同社 経営戦略室 課⻑ 中村岩生さまに農産物業界におけるパレット輸送の状況についてお伺いしました。

※2024年5月当時の情報をそのまま掲載しています
※掲載されている会社名、商品名は、各社の登録商標または商標です

⻘果物業界における「2024年問題」の深刻度は?

農産物業界でも「2024年問題」を深刻な問題と受け止めています。農産物の輸送は⻑距離輸送をともなうことが多いのが特徴の一つです。大田市場にも北海道から沖縄までさまざまな産地から商品が届きますが、その輸送の大半はトラックが担っています。
⻑距離輸送では積載効率を優先させるためにパレットを使用しない「ベタ積み」と言われる輸送が多くみられるのですが、「ベタ積み」の場合、10トン車ですと産地での積み込みに2時間程度、市場での降ろしにも2時間程度がかかります。ドライバーの残業時間や拘束時間に上限が設定されることで、産地の出荷範囲が制限されるという問題が顕在化しています。いままでのように産品を届けることができないエリアが生じることが懸念されているのです。

パレット輸送導入の効果は?

産地と市場で合計4時間以上かかっていた積み降ろし作業がそれぞれ30分以内に短縮され、ドライバーの負担を軽減することができます。農産物輸送では、産地側の複数カ所で積み込みを行い、幹線輸送をした後、消費地でも複数カ所の市場で荷物を降ろすという輸送形態があります。近年では、産地・消費地双方にストックポイントを設けて、積載効率を上げながら輸配送を効率化する動きが出てきているのですけれども、これは、積み降ろしをパレットで行うことを前提にした運用と言ってもいいでしょう。パレットを使うことによって、ドライバーの負荷軽減がはかられるとともに、配送ルートの選択肢が増えるというメリットもあるのです。

パレット化に向けて行ってきた取り組みを教えてください。

5、6年前から我々も卸として産地にパレット輸送の提案をしてきました。ただ、初めは難色を示されることも多かったですね。従来はパレットの費用がかかっていないからです。また、パレットと箱のサイズが合わないためにパレット輸送を行うとトラックの積載率が低下してしまうこともハードルになります。ほかには出荷の現場である選果場がパレットに対応していない、という理由もよく伺いました。
一方で、「ドライバーに⻑時間の荷役を強いている現状の輸送は⻑続きしないよね」と、理解を示される産地さんも多くありまして、そういった産地さんには、輸送試験を提案し、選果場の改修時期などにあわせてレンタルパレットを導入していただく事例もいくつかみられるようになってきています。

市場側ではどのような動きが?

市場側でも取り組みを行っています、産地さんがレンタルパレットで出荷をしても市場で空パレットの回収ができなければ、レンタルパレットの運用が成り立ちません。そこで市場内でのレンタルパレットの周知活動にも取り組んできました。大田市場では月に一回、仲卸(※)さんに「これは返却が必要なレンタルパレットです。」ということを認識してもらう活動から始めました。
※仲卸とは、卸売から買った品物を、小売や飲食店などに販売する事業者。卸売(卸・大卸)とは、市場に集まる産品を、せり・相対取引などを行って仲卸などに販売する事業者。

レンタルパレットを周知するためのステッカー
東京⻘果株式会社さま提供

最初は、管理が必要なレンタルパレットを敬遠する声もあったのですけれども、これから⻑距離輸送でパレットが不可欠だと いうことを丁寧に伝えるうちに、認知は高まってきたように思います。卸としてもレンタルパレットが市場から出ていかないよう、積み替えをして回収に協力しています。人力では厳しいところもあるのでクランプフォークリフトの導入を5、6年前から始めている状況です。
こうした取り組みが大田市場で定着してきたことを受けて、全国の中央卸売市場およそ20社と、どうやったらレンタルパレットを回収できるのか、ときには互いの回収率データを公開しながら課題解決に取り組んでいます。こうした活動を通じて、いまでは全国での回収率がほぼ100%になっています。

クランプフォークリフト
東京⻘果株式会社さま提供

今後の課題は?

これからは、市場から先の量販店センターや業務加工の加工場といったところまで、レンタルパレットで運んで、空いたところからレンタルパレットを回収する一貫パレチゼーションを目指していくべきだと考えていますので、さらに協力の輪を広げていきたいと考えています。

貴重なお話をありがとうございました。

(この記事は2024年3月14日に開催された『JPRセミナー2024』におけるインタビューをもとに再構成したものです。)