カルビー株式会社 さま
「ドライバーに易しく、優しい環境作り」その1つのキーが“パレット”
兼 カルビーロジスティクス株式会社 代表取締役社長
松元 久志さま
70年の歴史の中で、数々のヒット商品、ロングセラー商品を世に送り出してきたカルビー株式会社。お菓子業界でいち早くパレット化に取り組んだ同社は、2015年1月、京都工場で全面的にレンタルパレットを導入されました。執行役員 生産カンパニー SCM本部 本部長の松元氏に、その狙いや物流における今後の方針を伺いました。
※2015年8月掲載当時の情報を、2019年10月に一部更新して掲載しています
※記載されている会社名、商品名は、各社の登録商標または商標です
誰もが知るロングセラー商品の数々、年間20億袋の菓子・食品を製造
カルビー株式会社は、1949年創業の製菓・食品メーカー。今年で発売から55年目を迎えた「かっぱえびせん」ほか、「Calbeeのポテトチップス」が発売44周年、「じゃがりこ」が発売24周年を迎えるなど、ロングセラーの商品も数多い。最近では、「フルグラ」と言う朝食需要に対応した商品も人気を集めている。
製造する商品は平均すると約400アイテム、年間20億袋に及ぶ。商品は、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの店頭で購入されることが一般的だが、昨今はWebによる注文という購買パターンも増えている。お客さまと商品の接点が多様化する中、直接社員がお客さまと出会う場を作る目的で、アンテナショップ「Calbee+(カルビープラス)」や、高級感のある商品を提案する「GRAND Calbee(グランカルビー)」などの直営店も展開している。
受注から納品まで、各プロセスすべてにかかわる物流部
同社は、北海道から鹿児島まで、全国14カ所の工場で商品を製造。物流を担当するのは物流部だが、同社の物流部の仕事は、部署名からイメージできる業務とはやや異なる。松元氏は、業務範囲を次のように説明する。
「サプライチェーン・マネジメントをしているという認識の方が良いのかもしれません。まず、卸売業様・小売業様からの受注窓口が1つの業務。注文を受けて、全国の倉庫から商品を出荷します。商品を供給するための生産計画も物流部の担当。それに関連する原材料の調達、商品に必要なフィルムや段ボールなどの包装資材調達のほか、荷役の管理、倉庫内の運営管理までを担当します」
つまり、同社の物流部は受注から納品まで、すべてのプロセスにかかわる部署ということになる。商品の輸送・配送を実際に行っているのは、関連会社のカルビーロジスティクス株式会社を窓口とする物流協力会社だ。物流拠点は、北海道から沖縄まで全国15カ所にあり、ここから卸・小売のセンターに商品が納品される。
スナック菓子は軽量嵩高商品、だから積載効率を高める必要がある
スナック菓子は、ほとんどが軽量嵩高商品であり、トラックに満載しても100万円前後。積載率を高めて、効率よくお客さまにお届けしなければ、物流費が吸収できないという特性を持つ。
「積載率を高めるための例をあげますと、お客さま2社が同じ到着時間指定で注文されると、トラックが2台必要になります。しかし一方が8時、もう一方が10時なら、1台のトラックで効率よく配送できます。基本的には、ルート配送にあわせお客さまと納品時間をご相談しますが、ルートの見直しも定期的に行い、積載率を高めるようにつとめています。そのために、お客さまと連携しながら、各エリア、各ルートの積載率がどのくらいか、"見える化"をはかっています」と、松元氏は言う。
同社は、効率化とCO2削減を目指し、ほかの製菓メーカーや食品メーカー十数社とともに、共同配送も実施。長距離輸送の商品については鉄道輸送も行い、CO2削減へ取り組んでいる。また、ルート配送のレギュラー車両の約91%にあたる507台に車載器を搭載する(2013年度時点)など、エコドライブを推進している。
パレット化を推進することで、ドライバーの労働環境の改善をはかる
同社は、1986年に工場と消費地が近い首都圏で自社パレットによるパレット輸送を開始。積載率を高めるため高さ120mmの自社パレットを使用していたが、出荷の急増などにより自社パレットで賄えない部分はJPR11型レンタルパレットを利用していた。
西日本でのパレット導入はあまり進んでいなかったが、一段と厳しくなる物流環境を鑑みて、2014年に「ドライバーに易しく、優しい環境作り」をスローガンに掲げ、その一環として2015年から、京都府の京都工場から西日本に出荷する「じゃがりこ」を、全面的にパレット輸送に切り替えた。「じゃがりこ」はサイズが小さく、1ケース(12個入)もコンパクト。それを昨年まではドライバーが手作業で積んでいた。
「『ポテトチップス』なら約1,500ケース、手作業でも約1時間半で積み終わります。しかし、『じゃがりこ』は約5,000ケース、約3時間かかります。こうしたドライバーの負担を軽減するために、JPRさんのパレットでの輸送に切り替えました。パレット化により、積み込みと荷卸しの時間は30〜40分になり、1運行当たり4時間以上の作業時間が短縮できました。京都工場をモデルケースに、さらなるパレット化を推進したいと考えています」と、松元氏は語る。
ドライバーに優しい環境作りを進める背景には、近年のドライバー不足も関係している。
「まずは労働環境を変える必要があります。ドライバーの勤務時間の割合は、運搬、積み込み、荷卸しのほかに、待機時間があります。予定の時間にセンターに到着しても、荷卸しの順番待ちが発生しており、荷卸しできるのが2、3時間後になることも。順番を確保するためには、3時間前に到着しないといけない。そうした余分な時間も長時間労働の原因。納品先での荷卸しまでの待機時間をデータ化し、卸売業様・小売業様と共有させていただき、改善への取り組みを進めています。無駄な待機時間をなくし、次の仕事にすぐ向かえる、そして決まった時間に退社できる。そうした効率の良い仕組みを作っていきたい。収入の面も含めて、ドライバーの労働環境を向上させたいのです。ドライバーの労働環境を変える1つのキーがパレット化。手積みがなくなれば、女性ドライバーにも活躍の場が広がります。すべてのドライバーに優しい環境作りをもっと実現していきたいですね」と、松元氏は夢を語る。
目標を1つに、物流の課題をJPRと共有し解決していきたい
これまで同社のパレット化が、西日本で進んでいなかった理由の1つが、工場と消費地が首都圏よりも離れており、パレット回収にコストがかかるためだった。この課題を解決するために、京都工場ではJPRのレンタルパレットを導入。納品地の最寄りのデポに返却できるようになり、回収費用が不要になった。松元氏は、レンタルパレットのメリットを次のようにあげる。
「繁忙期や新商品の一斉発売など、商品の在庫は変動します。ですから、年間通じて自社パレットだけを利用するより、不足分についてはレンタルパレットを活用する方が効率的です。当社の基準を満たした一定品質のパレットを、必要なときに必要なだけ借りられるのがメリットです。自社パレットの所有枚数の抑制にもなります。また、袋詰めの商品は、空気で衝撃を吸収する設計になっていますが、パレット化によってハンドリング回数が減れば、中身の品質もより良く保たれると思います」
最後に、松元氏にJPRへの要望を伺った。
「現在、JPRさんとは、定期的にミーティングをさせていただいています。今回の京都工場での取り組みでも、1カ月、3カ月、半年、1年というサイクルで点検や検証を行い、お互いの課題を共有しながら解決していこうと話し合っています。共同で仕事をしていくことで、お互いのメリットが得られるようにしていきたいですね。運送会社様、物流会社様、卸売業様・小売業様など、物流にかかわる皆さまとともに課題を共有し、ドライバーに優しい環境を作り、将来的にはレンタルパレットで工場から卸売業様・小売業様まで運べる仕組み作りを目指したい。その理想を実現するために、目標を1つにして、現在私たちができることをともに行いたいですね」