一般社団法人 Pパレ共同使用会 さま

Pパレの不正使用・流出をなくすため、システム導入と共通伝票で流通を可視化

左から:一般社団法人Pパレ共同使用会
常務理事 平世 哲雄さま・代表理事 岸野 博行さま

日本の主なビール・清酒・焼酎などメーカー123社が加盟する一般社団法人Pパレ共同使用会。
アルコール飲料などを出荷する際に使用するビール9型プラスチックパレット(以下、Pパレ)の共同利用の推進とともに、不正使用・流出防止の活動を行っている。同会の岸野博行代表理事と平世哲雄常務理事に、パレット管理の現状と回収率アップの工夫、また今後の課題について伺った。

※2022年11月掲載当時の情報をそのまま掲載しています
※記載されている会社名、商品名は、各社の登録商標または商標です

Pパレの共同使用の推進管理強化を目指し設立

一般社団法人Pパレ共同使用会は、2013年3月に設立され、今年で9年目を迎える。前身はビールメーカー4社が集まり、Pパレの適切な管理と共同利用の促進を目指して組織化したのが始まりだった。
Pパレは、900×1,100mmのサイズで設計されており、主に酒類の輸送や保管に利用される。以前は、メーカーごとに、それぞれ自社のPパレで納品し、その際に自社のパレットのみを回収するという方法をとっていた。そのため取引先では、Pパレをメーカーごとに仕分けして保管する必要があり、メーカー側でも回収時の選別作業に手間取るといった問題点があった。そこで、業界が一団となってPパレの共同利用と無選別回収を進めるとともに、同会でPパレ全体の流れを管理することになったのである。
目標は回収率100%、パレットの回収率が低いエリアに集中して働きかけたり、不正使用や流出に関する啓発活動などにより回収率アップを目指す。

共通受払いシステムと共通伝票でPパレの流通を可視化

法人化され普及活動も進んだことで、2013年にはパレット回収率が99.6%にまで改善したものの、翌年は99.31%、未回収枚数で約30万枚となり、その後は30万枚以上の未回収枚数で推移している。
「99.3%であれば、未回収分は0.7%で少ないのでは、と思われるかもしれません。しかし年間約4,000万枚強の出荷がありますので、その0.7%の約30万枚前後が紛失したことになります。金額でいうと十数億円の損失。決して少ない数字ではないのです」と言う岸野氏。
そこで、2014年6月「Pパレ共同使用会共通受払いシステム」を導入し、受払いの共通化を実現させた。これは、JPRがパレット管理システムのノウハウをもとに独自に開発したものだ。同会では、共通受払いシステムの利用開始と同時に、まちまちだった受払い伝票も「Pパレ共同使用会指定伝票」に統一した。その効果や狙いを、岸野氏は次のように説明する。

「加盟企業と納品先、運送会社に、Pパレの出荷・回収データをシステムにインプットしていただくことで、加盟企業ごとの出荷枚数や回収枚数を、一括して把握できるようになりました。Pパレの流通実態の見える化をはかったわけです。それによって、回収率の低いエリアを特定して回収を強化するなど、具体的に対策が打てるようになりました。また、通常の流通ルートから漏れたパレットの回収は、主にJPRさんに調査をはじめ代行回収までをお願いしています。2021年も約3万枚強の枚数を回収していただきました」
また、企業によって異なっていたPパレの印字表示も、表記を統一。「譲渡・無断使用一切禁止。一般社団法人Pパレ共同使用会管理」と明記したことで、Pパレの所有を明確にアピールし、返却意識を高める狙いだ。

不正使用や流出による未回収問題への取り組み

「Pパレ共同使用会共通受払いシステム」の導入によって、パレットの流通が可視化され、管理面では進んだが、不正使用や流出による未回収問題は、今も解決策を模索する日々だという。
「社会全体に、Pパレがいかに貴重なものかということが、まだ十分理解されていないのだと思います。毎年足りない分を追加購入するコストも莫大ですし、Pパレが足りなくなれば商品を消費者にお届けすることができません。パレットは物流の大動脈と言っていいぐらいです」と言う岸野氏。
JPRの調査により、本来流通するはずのない青果市場でPパレが見つかることが多いことがわかったため、関係省庁や市場関係者が集まる会合に出向き、Pパレ使用会の活動をアピールし、パレットの回収協力を依頼するなどの活動も行っているという。
さらに、Pパレの不正使用や未返却に対する意識を変えるための啓発広告も制作している。たとえば、輸送関係者向けの専門誌などで、継続的な出稿計画を行っていると言う平世氏。

こうした啓発活動によって、2017年の10件を皮切りに2021年にはホームページや啓発広告を見たので連絡したという不正使用の情報提供が、55件あったという。
「不正使用を見かけた場合に、電話なりメールなりでお知らせいただくようホームページや広告に情報連絡先を掲載しているのですが、2017年に初めて一般の方から直接連絡があり情報提供いただきました。その後も定期的に情報提供をいただいています。コンプライアンスの高まりと、啓発活動双方の効果でしょう」と平世氏。
不正に保有し、返還交渉をしてもそれに応じてもらえない悪質なケースでは、顧問弁護士と相談の上、法的措置をとることもある。

不明パレットをなくすためにも使い勝手の良い管理システムへ

JPRのシステムを導入したことで、正規の流通ルートでは明確に追跡できるようになったものの、100%のPパレ回収を実現するには、そこからの流出をいかに防ぐかが、今後の課題でもある。
たとえば、不正な持ち出しによりシステムで把握できる流通網から流出することもある。
それを防止するためにも、出荷入荷の各拠点で担当者がきっちりシステムに入力することが必要不可欠なのだが、実際にはさまざまな物流形態の違いもあり工夫が必要だ。
「どこの企業でも人手不足が大きな問題となっていますので、システムに入力する手間がかけられないのが現状です。加盟企業にも得意先にも運送会社にもスムーズに使っていただくためには、JPRさんと相談しながらシステムを改善できる点は改善していきたい。加盟企業からも、パレットの在庫管理に役立てられないかなど、さまざまな意見も出てきています。JPRさんが始められたようなICタグを利用しての管理方法も、今後は必要かもしれません。いずれにせよ、JPRさんの豊富な経験と知見をお借りしながら、より良い管理システムを構築していきたいと思います」と平世氏は話す。

物流問題に注目が集まるなか、100%の回収率を目指す

一方で、宅配業者の厳しい現状などが社会問題化されている中、企業のトップはもちろん、社会全体が物流の問題に注目していることを感じると、岸野氏は言う。
「環境面でも経営面でも、物流に対する意識が変わってきました。たとえば、2019年よりビール4社がパレットの共同回収を始めるなど、物流面で新しい取り組みが行われています。今後は、パレットの追加購入コストが経営を圧迫しかねないこと、物流面での課題解決が生き残りの重要戦略になることを、会社側も十分認識しています。これを追い風として、私たちPパレ共同使用会も、ますます積極的に活動していきたいと思います」