六甲バター株式会社 さま
RFIDタグ付きレンタルパレットで積載商品のトレーサビリティと付帯業務の効率化を実現
営業管理室 室長 石田 眞さま
生産本部神戸工場稼働推進室 室長 小泉 忠さま
1958年にQ・B・Bブランドのプロセスチーズを発売して以来、60年以上にわたって日本のチーズ市場を牽引してきた六甲バター株式会社(以下、六甲バター)。2019年に新設された神戸工場では、JPRのRFID付きレンタルパレットが品質管理や業務効率化に貢献している。同工場の立ち上げに携わってきた石田さま、小泉さまにその経緯や現状などを伺った。
※2020年10月掲載当時の情報をそのまま掲載しています
※記載されている会社名、商品名は、各社の登録商標または商標です
生産能力増強のため工場新設が急務に
神戸市に本社を置く六甲バターでは、従来、稲美工場(兵庫県加古郡稲美町)と長野工場(長野県佐久市)の2カ所で、同社売上の95%を占めるチーズの生産を行ってきた。しかし、近年プロセスチーズ市場が着実に成長を続ける中、既存2工場の生産がひっ迫。土日も休みなく24時間フル稼働という状況が発生するなど、生産能力の増強が急務となっていた。また、基幹工場である稲美工場は、1966年の開設以来約50年が経過していたことから、建屋や設備の老朽化、需要の増加に対応しきれなくなったレイアウトなども大きな課題だった。
そうした状況を受けて、同社では六甲山麓に神戸工場の建設を決定し、2017年11月に着工。2019年4月には、年間約4万トンのプロセスチーズ生産能力を誇る、新たな基幹工場が稼働を開始した。
経営理念を具現化する新工場
「新工場建設にあたっては、当社の経営理念『健康で、明るく、楽しい食文化の提供によって社会に貢献する』の具現化を追求しました」と小泉忠さんは語る。神戸工場開設前の「新工場建築推進室」の頃からプロジェクトの中心的役割を担ってきた現場のエキスパートだ。具体的には、安全・安心の品質や、より高度な生産性はもとより、環境へのやさしさ、働く人へのやさしさ、さらに見学コースの整備によるファンづくりなど、新工場には多面的な要件が求められたという。
一方、「私たちのビジネスはお客さまあってのもの。常にお客さまのニーズを大切にしなければなりません」と話すのは、生産・物流を含めて広く営業全般の管理にあたる石田眞さん。「新工場では生産性の向上が必須でしたが、しかし同時に、300品種という製品の種類を絞り込みたくはありませんでした。可能な限り自動化しながら、いかに柔軟にお客さまのニーズに応えていくか。神戸工場開設以来1年半、今でも毎日が試行錯誤の連続です」。
JPRレンタルパレットのRFIDに注目
神戸工場では、最新の製造実行システム(MES)と工場内物流システムの導入により、生産の自動化・効率化がはかられることになった。そのシステム設計・構築の過程で浮かび上がった課題の1つが、工場内物流における情報管理の方法だった。
「当初の計画では、パレタイズした段ボールに伝票ラベルを貼り付けて、バーコードリーダーで読み取る方法を想定していました」と小泉さん。「しかし、パレットの上の段ボールは商品によって大きさも積み方も異なるため、ラベルの貼り付けを自動化するのは難しい。よい方法を検討する中で着目したのが、JPRのレンタルパレットに付いているRFIDタグでした」。
六甲バターでは、30年以上前からJPRのレンタルパレットを利用している。石田さんは、「2000年以前は木製パレットが主流でしたが、食品工場内に木製品を持ち込むのは衛生面で問題があるという考えに変わってきました。また、レンタルパレットなら必要なときに必要な分だけ借りられ、回収の手間もないということで、長くJPRさんのプラスチック製レンタルパレットを使っています」と話す。
JPRではレンタルパレットの管理用にRFIDを導入している。六甲バターではそれに着目し、自社工場内のシステムで活用できないかと考えたのだ。
トレーサビリティに必須の情報を管理
ただ、そこには問題もあった。当初の設計段階では、工場内の搬送には自社専用パレットを使用し、出荷の直前でJPRのパレットに載せ替える想定だった。ところが、レンタルパレットを外部から持ち込むことになると、工場内の区画ごとに衛生レベルを定めた「ゾーニング」の見直しも必要になる。「そこで確認をしたところ、JPRさんのレンタルパレットは、回収後にすべて洗浄した上で出荷されているとのこと。それなら虫や異物などもついていないはず、ということで、衛生面の問題はクリアできました」と小泉さん。さらに、出荷直前での出荷用パレットへの積み替え工程が不要になったことで、作業時間の削減にも大きく貢献したという。
六甲バターでは、RFIDに紐づけたデータを、トレーサビリティの管理に利用している。「1枚のパレットには同じ生産ロットの製品が載っています。パレットのIDでロットを管理することにより、万一、品質の問題が発生したときに、対応すべき範囲を確実に、素早く絞り込むことができる。RFIDは、お客さまに安全・安心なチーズをお届けするために欠かせない情報ツールとなっているのです」と石田さんは強調する。
RFIDのさらなる活用にも期待
現時点でJPRのレンタルパレットの98.5%にRFIDタグが取り付けられており、これは運用上問題のないレベルだという。今後はタグの読み取り精度のさらなる向上などもはかりつつ、RFIDの活用拡大も検討していきたいと、小泉さんは笑顔で語る。「今は出荷の際に、納品先で必要な紙の出荷伝票を貼付していますが、せっかくJPRのパレットに載せてあるのですから、RFIDを活用して、伝票レスが実現できるといいですね。JPRさんにもぜひご協力いただければと思います」。
六甲バターのメインブランド「Q・B・B」はQuality's Best & Beautifulの頭文字を組みあわせた造語で「最高の品質と最高の美味しさ」を意味するという。誕生から60年を経ても古びることのないそのブランドのもと、より一層の品質と美味しさの提供を目指し、神戸工場はこれからも進化を続けていくことだろう。
RFID(Radio Frequency IDentification)とは微小な無線チップにより人やモノを識別・管理することができる、インターネット以来の画期的な情報技術。SuicaやEdyなどのICカードもRFIDの一種である。