株式会社ビームスホールディングス さま
RFID活用、自社物流でブランド価値を高める物流のビームススタイル
ロジスティクス本部 物流業務部 山内 亮太さま
国内外に160店舗以上を展開し、ファッションを中心に雑貨やインテリア、音楽やアートなど、さまざまな分野のモノとコトを通して、新しいライフスタイルやカルチャーを提案するBEAMS。それを支える物流の現場でも先進的な取り組みが注目を集めている。ロジスティクス本部 物流業務部の山内亮太さんにお話を伺った。
※2019年11月掲載当時の情報をそのまま掲載しています
※記載されている会社名、商品名は、各社の登録商標または商標です
物流の中核拠点
BEAMSの躍進を支える物流の拠点が、東京・江東区新砂にある「BEAMS(ビームス) WARE(ウェア) STATION(ステーション)」だ。延床面積約5,000坪、4階建の建物には約100万点の商品がストックされている。店舗数の増加にともない、在庫が増えたことから、近くの南砂町にある「BEAMS(ビームス)TRANSFER(トランスファー)CENTER(センター)」で検品を行った商品を、ここで仕分けをして保管し、各店舗に出荷する。また静岡県浜松市にはセール品を保管する倉庫があり、主にこの3カ所の拠点で物流を担っている。
RFIDの活用による効率化
BEAMSには30以上のレーベルがあり、国内外からセレクトされた多種多様な商品を販売している。また企業や地域とのコラボレーションによる商品開発も行っており、膨大なアイテム数を管理して全国の店舗のリクエストに迅速かつ正確に対応することが求められる。これまで「リニソート®」と呼ばれる自動で商品を仕分ける大型のマテハンやハンガーにかかったままの商品を高速で仕分ける「ファッションソート®」による機械化を進め、効率的な物流システムを構築してきた。
2011年にはRFID(自動識別技術)活用の構想を練り始め、2012年にスモールスタートを切り、2015年にはRFIDシステムを導入。すべての仕入れ商品にRFIDタグがつけられ、ピッキングカートの端末とハンディターミナル、さらにマテハンもRFIDシステムに対応するよう改良し、仕分けやピッキング、出荷検品などにRFIDを活用している。「これまでのようにタグを探す必要がなく、商品をかざすだけで良いので入出庫作業の効率が格段に上がりました」と山内さんは話す。この最先端の物流システムが評判になり、これまで100社以上が見学に訪れている。
日本の魅力を世界に発信する東京・新宿の「BEAMS JAPAN」では、雑貨や食品など幅広いアイテムを扱っているが、それらもここから店舗に出荷されている。「ウェア類はマテハンでの仕分けが可能ですが、陶器や食品類など、商品の特性にあわせて機械と人の手を使い分けています。もちろん、RFIDを導入したことで、ピッキング効率は上がっています」
RFIDシステムは店舗でも活用されている。ハンディスキャナーでRFIDタグを読み取ることで、会計やバックヤードでの検品、さらに棚卸しの作業時間が大幅に短縮され、スタッフの接客時間が増えたという。
自社物流へのこだわり
「当社では、きめこまやかなお客さまへのサービスにこだわっていて、物流としても迅速かつ的確に対応できるよう自社物流に取り組み、システムも提案しています」と山内さんは自社物流の重要性を語る。また「物流の出荷計画ではマーチャンダイザー(MD)と連携を密にとり、配分計画を立てています。それも自社物流ならではの強みです」
昔は店舗のバックヤードにできるだけ多くの商品を入れることが主流だったが、店舗ストックが増え、ほかの店舗に商品が供給できなくなることが課題だった。物流で一元的に在庫管理をすることで、リアルタイムに店舗に旬の商品を配分できる。BEAMS WARE STATIONが店舗のバックヤードのように機能することで、時代を先取りしたBEAMSならではの魅力や感動を提供できる。
自社で都内店舗へのルート配送も行う。ロゴの入ったオレンジ色の2tトラックが、都内と近郊にある約50店舗へ商品を配送する。町田、立川、横浜、大宮、柏の一部までカバーしているという。
EC用と店舗用の在庫を一元管理
BEAMSではブランド価値や競争力を高めるためにEC事業にも力を入れ、2016年にコーポレートサイトとECサイトを統合して「BEAMS公式サイト」を開設した。同時にそれまで外部委託していたECサイトの物流を内製化し、在庫の共有化をはかった。BEAMS WARE STATIONでは店舗向け在庫とEC用の在庫を一元管理している。RFIDの活用により在庫精度が上がったことで可能になったという。「マテハンや自動梱包機を新たに導入し、1日に約2,000点の配送を行っています。EC事業では物流が直接、お客さまとの接点になるので、梱包ケースをオリジナルでデザインし、商品サイズにあわせて自動パッキングするなどの工夫をしています」
資材のデザインをカスタマイズ
商品をストックし、運搬するためのラックや折りたたみコンテナなどの物流資材にコーポレートカラーのオレンジやブルーが使われているのもファッションやライフスタイルを提案する企業ならではのこだわりだ。「商品を搬送するコンベアも入・出を動脈、静脈として赤と青に色分けしています。館内にはコーポレートカラーを使っている所がたくさんあります。なにかを作るときにはコーポレートカラーを意識します」と山内さんは笑顔で話してくれた。資材のカスタマイズにはもう一つの理由がある。「館内には約300人が働いていますが、障がいのある人もいますし、最近は、派遣スタッフの活用が多くなっています。そのため、誰でも認知しやすい職場環境が求められています。資材の選定やデザインでも第一に考えることです」と山内さんは言う。直感的に判断できることが重要だという。「JPRさんには折りたたみコンテナ、ドーリー台車、パレット、Zラック(ハンガーラック)などの資材をお願いしています。折りたたみコンテナだけでも7種類くらいありますが、いろんな用途に活用できるように色や文字の切り抜きなど細かいところまで対応していただいています。新しく作るときには新たな用途に備え、色やデザインを変えています。以前購入したドーリー台車はコーナーカラーを黒にしましたが、色を変えることで、スタッフに指示をしやすくなり、みんながスムーズに動けます」。一目でわからないと張り紙をするなど煩雑な環境になってしまう。資材の色を変えることで、現場の作業効率を高めることができる。
マテハンの拡張によるさらなる自動化
最後に山内さんにこれからの抱負を伺った。「保管・出荷点数を増やすためにRFIDのさらなる活用や、マテハンの拡張を含めて一連の作業をできるだけ機械化し、効率的でミスのない物流環境を目指した取り組みを進めています。JPRさんにもこれからもBEAMSらしい資材づくりにご協力いただきたいと思っています」
RFID活用、自社物流、都内ルート配送により、迅速で的確な物流を実現しながら、顧客満足度やブランド競争力を高めるBEAMS。時代に先駆け、新しいライフスタイルや文化を発信し続けるBEAMSの精神は物流の現場にも息づいている。これからもさらなる進化を遂げていくことだろう。
※RFID(Radio Frequency IDentification)とは微小な無線チップにより人やモノを識別・管理することができる、インターネット以来の画期的な情報技術。SuicaやEdyなどのICカードもRFIDの一種である。