福島キヤノン株式会社 さま

在庫管理にRFIDを導入し業務の自動化とスペース効率化を実現

福島キヤノン株式会社 システム技術部 加藤 裕輝さま

無線電波を利用して非接触でICチップの中のデータを読み書きするRFID(自動識別技術)は、高度な管理や業務の効率化を実現するツールとして、注目を集めている。
経済産業省が策定した「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」もまさにその一つだ。
プリンター用インク化成品の在庫管理を効率化するためにRFIDを活用することにした福島キヤノン株式会社の加藤裕輝氏にお話を伺った。

※2019年2月掲載当時の情報をそのまま掲載しています
※記載されている会社名、商品名は、各社の登録商標または商標です

先進技術を活用した業務システム

福島キヤノン株式会社は、キヤノングループのインクジェットプリンターの中核生産拠点であり、インクの製造からカートリッジ梱包までを一貫して行う自動化ラインを24時間稼働させている。またインクジェット事業のマザー工場として他拠点の工場にインクの供給を行う。

社内基幹システムの開発、運用を担うシステム技術部は、生産管理部と協力し、RFIDを活用することで人手や工数をかけずに製品管理ができないか、と言う課題解決に向けてシステム構築を開始した。
同社では、先進技術を積極的に活用し、自社の業務改善に役立てる。今回のRFID在庫管理システムはすべて内製しており、その技術や運用ノウハウをグループへも展開する。

RFID獲得のターニングポイント

新たに開発された業務システムの対象は、製造されたインクを輸送保管するドラム缶の在庫管理。これまではバーコードで管理をしていたが、洗浄時期管理や老朽管理、所在管理と多くの課題解決が求められた。そこでRFIDの技術を活用し、業務を自動化しようと2016年に検討を開始する。

多くのRFIDタグ、アンテナやゲート、ハンディタイプのリーダーを調査、テストするも、開発の糸口は見えなかった。そこで「流通コードの管理および流通標準に関する国際機関であるGS1に加盟している流通システム開発センターに相談したところ、JPRをご紹介いただきました」と加藤氏は当時を振り返る。JPRでは、国際標準のコード体系EPC globalに準拠したRFIDシステムを業界に先駆けて提供している。「JPRデポでRFIDとEPCISの標準化活動を伺い、ようやくRFID在庫管理の実現が見えてきました」と加藤氏。その後、デポで「epalゲート」の仕様や性能を検証した上で、グローバル企業の一員として将来を見据え、国際標準のEPCに準拠した同製品を採用した。

読み取り精度の高さと範囲

新棟建設にあわせて業務システム開発を進め、2018年1月から新システムの運用を開始した。「epalゲート」は保管庫の出入口に設置され、インクの入ったドラム缶に貼りつけられたタグから個体情報を自動的に読み取る。タグは洗浄や運搬の際にも邪魔にならず、かつ読み取りやすい位置や高さを検証しながら調整した。読み取ったEPCデータは、ロット番号や部品番号、製造番号などの情報に紐づけられ、在庫管理や、品質管理などに活用している。

「RFIDゲートの他製品と比べて、「epalゲート」は誤読が非常に少ない」と加藤氏。アンテナのチューニング、読み取り範囲や出力の調整がしやすいことも魅力だと言う。「ピンポイントで読み取りできることは大きなメリットです。周辺まで全部読んでしまうと物を置く場所や動線に制約ができてしまいます。それでは、作業効率やスペース効率が悪くなってしまう」と加藤氏は力を込める。ゲートは物理的なサイズだけでなく、読み取り範囲が専有範囲になる。「RFIDは電波の特性として、どうしても裏面にも電波が反射して回り込んでしまいますが、ドラム缶をゲートの裏面に仮置きした時にも概ね読み取りはありませんでした。ただこれはあくまでその時の状況においてなので、水平展開の際には状況にあわせた検証が必要です」と加藤氏は言う。RFIDは、アンテナとタグ、それを制御するリーダーの組み合わせ、さらにアンテナの特性を理解し、制御していくことが重要になる。

通常は、1枚のパレットにインクの入ったドラム缶2本を平積みに、空の缶の場合は2段積みにする。2段積みの場合は高さが2.50mになるので、一般的なパッチアンテナでは、読み取りが難しいことも課題だったが、「epalゲート」は3mの読み取り範囲がカバーできる。

RFIDを水平展開

設置にあたっては、JPRのデポでのテスト結果をもとに距離と信号レベルを検証しながら、調整を行った。特に設置の角度にこだわったと加藤氏は言う。「ゲートをハの字に設置しています。外側にアンテナを向けることで、読み取りを出入口に集中させて、それ以外の所には電波が届かないようにしたことが、今回工夫した点です」

「RFIDへの挑戦と展開、ドラム缶への定着化をはかってきましたが、今後は他拠点を含めた管理システムの構築をしていきたい」と加藤氏は構想を語る。

最後に「情報提供いただいたことが採用につながりました。今後もRFIDの世界的な動きをとらえ、物流の効率化に貢献する製品やサービスを開発していただきたい。使いやすく、効果的でかつ、いろいろな場所で使えるものを期待しています」と加藤氏はJPRへの要望を話してくれた。

「epal(イーパル)ゲート」とは

フォークリフト(以下FL)で搬送する物流容器に貼付されたUHF RFIDタグの読み取りに適したゲート型リーダシステム。一般的なパッチ型アンテナでは、①FL通過時の電波の反射と②金属や水などの物質による電波的死角が積年の悩みであったが、読み取り距離が長くない直線偏波アンテナを多数組みあわせることで、FL通過時の反射を抑えた死角のより少ない読み取りエリアを実現。
JPRでは、本ゲートを、RTIの総量管理システム「epal」や物流容器個体管理システム「Logiarx(ロジアークス)」といったサービスと組み合わせ、より便利な物流の標準化、効率化をご提案していきます。